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パッションフラワー

Lisa Watson
BHSc, ND
https://www.drlisawatson.com
30 September 2013
日本語

パッションフラワー
By: Lisa Watson BHSc, ND
Integrative Health Institute
46 Sherbourne Street, 2nd Floor
Toronto, ON M5A 2P7
www.integrativehealthinstitute.ca
www.drlisawatson.com


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パートI パートII パートIIIパートIV

Passionflower and Anxiety


パートI:パッションフラワーと不安

美しい紫色のパッションフラワーは装飾花として有名ですが、世界中の文化圏で何世紀にもわたり効果の高いハーブ薬として高値で取引されてきました(1)。メキシコと南アメリカのアステカ族はパッションフラワーを鎮静剤および神経強壮剤として使いましたが、これをスペインから来た征服者がヨーロッパに持ち帰り、そこでパッションフラワーは隆盛をきわめました(2)。この記事では、神経についての健康上の懸念に対するパッションフラワーの用途、特に不安や不眠症そして中毒に焦点を当てます。最後に、パッションフラワーの適切な使用に関する概要および服用量、そして特定の人々に対する使用をもって、この驚くべき植物性薬品についての議論を締めくくります。

全般性不安障害(GAD: generalized anxiety disorder)、パニック障害、不安障害、強迫神経症そして心的外傷後ストレス障害は、医師が最も良く診察するメンタルヘルスの問題です(3)。不安障害を持つ人々の半分以上が、リラックス法、ホメオパシーそして植物性薬品といった補助的かつ代替的な治療による不安の軽減を探し求めています(4)。

全般性不安障害の治療では、パッションフラワーはオキサゼパム(ベンゾジアゼピンの1つ)と同じくらい効果的であることが分かりました。ある草分け的な調査では、4週間にわたりパッションフラワーとオキサゼパムとの両方が不安の症状を管理するのに等しく効果的であることを、研究者たちは発見しました。パッションフラワーは、主に仕事の能率を損なうマイナスの副作用が起こることがより少ないという理由から、オキサゼパムと比べてより優れている治療であると考えられました(5)。

不安を引き起こすような外科的処置を受ける患者たちについての調査では、パッションフラワーの抗不安効果が示されました。ヘルニアの手術を受ける患者たちは、一服の経口パッションフラワーを服用後10分後および30分後に不安スコアが減少しました。患者たちは鎮静の副作用は何も感じませんでしたが、これは手術前状態では重要な考慮事項です(6)。同様の抗不安作用が、パッションフラワーを脊髄麻酔に先立ち用いたある調査で見られましたが、やはり鎮静作用の増加はありませんでした(7)。

新興の研究は、パッションフラワーの不安軽減作用に関する潜在的な作用機構に向けられています。神経伝達物質であるγアミノ酪酸(GABA: gamma-aminobutyric acid)が、不安障害の進行に関連があるとされ、ベンゾジアゼピンのような薬物治療の焦点とされました(3,8)。動物実験では、パッションフラワーがGABA受容体に結合し、この鎮静性の神経伝達物質の作用を調整することが可能であることが示されました(1,9-12)。これは、パッションフラワーが(テストした21の植物の中で最高レベルの)GABAを含有しているため (13)、あるいはバイオフラボノイドのクリシンのようにパッションフラワーに見られる別の化合物によるかも知れません(9)。

ベンゾジアゼピンに対して、パッションフラワーは短長期両方の使用についてマイナス副作用のプロファイルとの関連がありません。ベンゾジアゼピンは日中の著しい鎮静状態や意識混濁をもたらす可能性があり、急な服用中止の後の禁断症状と関連が認められました(3)。食品医薬品局はパッションフラワーを”一般に安全と見なされる”と分類しており、人を対象とした研究ではパッションフラワーは耐用性に優れ、眠気や動きを損なうといった著しい副作用がないことが分かっています(2)。

パッションフラワーは、多くの人々が薬物以外の治療の選択肢を求めている不安障害の治療において重要な代替となっています。更に研究を進める十分な根拠がありますが、伝統的な使用や予備調査では圧倒的なまでに肯定的な結果を示しています。この記事のパートIIでは、パッションフラワーのもう一つの伝統的な用途、不眠症について見てゆきます。



パートII:パッションフラワーと不眠症

Part II: Passionflower and Insomnia

By: Lisa Watson, BHSc, ND
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Passionflower and Insomnia 不眠症は、現代社会において主要な健康に関する関心事です。10-15%の大人およびそれと同率のティーンエージャーが睡眠の乱れを経験しており、不眠症はプライマリーケアの医師と専門家との両方が最も良く扱う病態です(1,2)。伝統的な薬草医は、不眠症に対処するための広く多様な選択肢を持っています。パッションフラワーは、Eドイツ委員会の不眠症と神経不安のための治療に記載されており (3)、アメリカ合衆国では一般市販の鎮静剤として1978年まで認可されていました(4)。

睡眠は、脳内でのホルモンや神経伝達物質そしてサーカディアンリズム(訳者注:24時間周期の生体内時計)による複雑な相互作用です(5)。同様に不眠症にも、多数の潜在的な原因や関連する医学的状態による複雑な過程があります。不眠症は、不安と鬱との両方に苦しむ人々に共通に見られ、これらの病態に対する多くの治療が不眠症に対する治療となり得るかが研究されています。

γアミノ酪酸(GABA)は、最も良く知られている抑制性(鎮静)の脳内神経伝達物質で、多くの睡眠誘発剤の主な標的です。GABAの生産を誘発したりGABA受容体に結合したりすることにより、不眠症の過度覚醒状態が軽減され睡眠が起こる可能性があります。脳内でGABAと相互に作用する薬剤の第一の部類はベンゾジアゼピンです。ベンゾジアゼピンは、入眠までの時間を短縮し、睡眠の質を高めることが分かりました(1)。しかしながら、睡眠障害に対してベンゾジアゼピンを用いることは、耐性形成や濫用の可能性や翌朝の鎮静状態そして認知面での障害との関連があることから、理想的ではありません(6)。不眠症のリバウンド、不安や短気などは全てベンゾジアゼピンの突然の中断に関連している共通の症状です(1)。

パッションフラワーは、マイナスの副作用や耐性形成なしに、脳内のGABA受容体に影響を与え睡眠を増進する1つの方法を提供します。GABAはパッションフラワーの気生の部分(訳者注:空気に触れている部分)に存在する素晴らしい成分です。パッションフラワーは多量のGABAを含有しているだけでなくGABAレセプターに結合して不眠症に関連のある過度覚醒状態を抑制する能力があります(7)。

いくつかの調査では、パッションフラワーの特に不眠症に対する評価が行われました。あるオーストラリアの研究では、毎晩のパッションフラワーのハーブティー1杯はプラセボと比べて睡眠の質を改善したものの、睡眠潜時(入眠するまでにかかる時間)は変えないことが分かりました。この論文の著者たちは、効果が足りないのは低服用量(1杯v.s.標準服用量3杯)のせいである可能性を示唆しています(8)。

伝統的な薬草医は、入眠を妨害するような神経不安や不安あるいは過活動の精神状態に関連する不眠を軽減するのには、パッションフラワーが最も望ましいと示唆しています。

この記事のパートIIIは、不安と不眠とは別の病態、中毒と薬物離脱とへのパッションフラワーの用途について見ていきます。



Passionflower - Plant medicine for anxiety, insomnia and addiction

パートIII:中毒・薬物離脱でのパッションフラワー

By: Lisa Watson, BHSc, ND
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Passionflower in Addiction/ Substance Withdrawal アルコール、煙草、麻薬、マリワナ、処方薬やレクレーショナルドラッグの中毒は、体におよぼす肉体的ダメージを超えた強い影響がありますが、これは家族や地域社会にも遠く及びます(1)。中毒の治療は、個人の健康および社会の両方にとって大切な目標で、成功には多面的なアプローチが不可欠です。

中毒の治療は解毒から始まります。この段階ではドラッグの摂取がなくなり体は中毒物質を受け取らなくなります。この段階は直ちに禁断を引き起こします。禁断は薬物摂取後の急性の病気で概して激しい様々な症状を生みます(2)。禁断症状は、震え、短気、吐き気、不眠、高血圧、発汗、強い不安、鬱そしてけいれんの可能性といったものです(3)。禁断の症状が和らげば、中毒に再び陥るのを避けるためにライフスタイルと精神医学のカウンセリングが必要です。

パッションフラワーは、解毒の治療と禁断との各段階で相当有望であることを示しています。中毒性のない天然の治療として、パッションフラワーはこういった目的で現在用いられているいくつかの薬剤の安全な代替を提供します。

2001年の麻薬(ヘロイン)禁断の治療におけるパッションフラワーの対照実験では、パッションフラワーを標準的な薬を使った治療(クロニジン)と組み合わせると、クロニジンのみと比べて、吐き気、痙攣、不安そして震えなどの禁断症状が著しく減少することが分かりました(4)。

動物実験では、パッションフラワーに含まれる成分が、ニコチンからの解毒に関連した禁断症状の激しさと重さとを減らすことが分かりました。同様にこの調査では、パッションフラワーが禁断と関連する体重減少(動物におけるストレスや抑うつの尺度)を防ぐことも分かりました(5)。

同じくパッションフラワーのベンゾフラボン・モイエティも、アルコール依存症治療の動物実験で用いられました。パッションフラワーの短期および長期両方の投与が、禁断作用の表れと不安行動とを著しく減少させました(3)。

マリワナ中毒は、パッションフラワーに好ましい反応を示す可能性のあるもう一つの物質濫用の問題です。パッションフラワーから単離したある化合物をカナビノイドと共にマウスに投与すると、耐性形成およびカノビノイドへの依存を防ぎました。同様にパッションフラワー抽出物の投与も、禁断作用の現れを減少させ、マリワナの使用に関連する薬物誘発性の性欲減退を阻止しました(6)。

予備動物実験に基づくと、パッションフラワーを統合的治療の一つとして中毒治療に用いるのは有力です。その無中毒性や薬による治療との低い相互作用のポテンシャルから、パッションフラワーは統合的ケアに加えるのに理想的であり、更に研究を進めることが奨励されます。

パッションフラワーは、不安や不眠そして中毒といった多様な健康に関する懸念の治療に素晴らしいポテンシャルを持っています。この記事のパートIVでは、パッションフラワーの服用量、特定の人々に対して用いること、そして安全性についてお話しします。



Passionflower - Plant medicine for anxiety, insomnia and addiction

パートIV:パッションフラワー:服用量と使用上の注意

By: Lisa Watson, BHSc, ND
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Passionflower; dosage and safety considerations パッションフラワーは装飾花以上の働きを持つ植物性薬品で、長い歴史を持ち、将来繁栄する可能性を秘めています。

トケイソウ科には500以上の異なる植物があります(1)。薬として最も高いポテンシャルを持つことが分かった種はPassiflora incarnata Linnaeusです(2)。抗不安のためにはパッションフラワーの気生部分のみを用いなければなりません。パッションフラワーの根には何の抗不安作用もありません。葉と茎とは最も万能であり、理想的なパッションフラワー製品はこれらの部分のみを含んでいます(3)。草木全体を含む製品は、治療効果を得るためにより多量の服用が必要となる可能性があります。

パッションフラワーは、アルカロイドやフラボノイド(4)そしてγアミノ酪酸(GABA)(5)といった多くの異なる活性要素を含んでいます。どの成分(クリシン、GABA、パッシフロリン、ベンゾフラボン・モイエティ)がパッションフラワーの作用を引き起こしているのかについて相当数の憶測がありますが、結局のところこれら全ての成分による共働作用がこの植物の薬としての作用に寄与していると想定するのが賢明です(2,3,5-7)。

パッションフラワーの抗不安作用に関するある調査では、メタノール抽出の植物にのみ不安緩解効果のあることが分かりました(3)。不安にはメタノール抽出のチンキ剤またはサプリメントが優れていると考えられる可能性があると同時に、水性抽出(お茶や煎じたもの)に効果がある可能性はより少ないでしょう。

パッションフラワーの服用量は望まれる効能により決まります。

表1. 推奨されるパッションフラワーの服用量
症状 パッションフラワーの服用量 コメント
不安 1-4mLチキン剤(気生部のみ)を日に2,3回 植物全体の抽出物が使われる場合には服用量を増やす必要があるかも知れません。
不眠 就寝前1-4mLチキン剤(気生部のみ 乾燥ハーブ(気生部のみ)小さじ1杯を熱湯で煎じたものを毎晩1-3杯 多量のハーブティーは排尿により睡眠を中断させるかも知れません。
中毒 1-4mLチキン剤(気生部のみ)を日に2-4回 人間に対する特定の服用量は確立していません。ある調査では1mLを日に3回、クロニジンと共にヘロイン禁断に対して用いました。

使用上の注意
パッションフラワーは食品医薬品局により“一般に安全と見なされる”(GRAS: generally regarded as safe)と分類されています。パッションフラワーは殆どの薬剤と相互作用がありません。理論上パッションフラワーは鎮静性の薬剤やサプリメントと相互に作用して、それらの鎮静効果や副作用の可能性を高めるかも知れません。

特定の人々
パッションフラワーは、その含有成分のいくつかにある子宮刺激作用のために妊娠中は安全でない可能性があります(10)。多くの薬草医は、パッションフラワーが妊娠中も安全であると考えていますが、注意が勧められます。

パッションフラワーは子供と若者とに対しては年齢に適した服用量を守れば安全です(11)。同様に、パッションフラワーは年配者にも安全で、ベンゾジアゼピンよりも良い選択かも知れません。それというのも、ベンゾジアゼピンは年配者の転倒のリスクを高めるからです(12)。

結論として、パッションフラワーは、特に不安や不眠そして中毒といった複数の神経系の障害を扱うための大きな治療ポテンシャルを持つ非常に安全なハーブであることが分かりました。パッションフラワーを多様な人々に対して、薬と共に統合的に用いることができれば、この植物性薬品は、広く行きわたっている前述の3つの健康問題に対して価値のある治療の選択肢となるでしょう。