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低強度レーザー治療

Christine Nguyen
BSc, BPHE, ND
https://www.oihc.ca
31 August 2013
日本語

低強度レーザー治療
By: Christine Nguyen, BPHE, ND
Ottawa Integrative Health Centre
1129 Carling Ave
Ottawa, ON. K1Y 4G6
www.oihc.ca


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パートI パートII パートIIIパートIV

Low Intensity Laser therapy


パートI:低強度レーザー治療とは何か?

高電力・高熱のレーザー治療は、20世紀中頃から組織を手術で切除するのに使われてきました(1)。レーザーがソビエト連邦とヨーロッパで1970年代以降使用されていたのに対して(2)、北米では1990年代初頭になるまでレーザー療法が開始されることはありませんでした。2002年には、FDAで最初のレーザー治療装置が承認を得ました(2)。今日、低強度レーザー治療(LLLT: Low Level Laser Therapy)は新興の臨床手段として自然療法の医師、医師、そしてリハビリテーションの専門家たちにより使われており、その非侵襲性の性質と広汎な有用性および組織の修復を刺激する効力により、急速に勢いを付けて来ています。LLLTは、痛みや変性の病気、皮膚疾患などを含む多くの種類の疾患の処置に使われています。

この4部シリーズはLLLTが何であるか、そしてそれがどのように使われているのかに焦点を当てます。パートIではLLLTの特徴とその仕組みに焦点を当てる一方で、以降の節では、怪我などの急性および慢性の痛みや腰痛、そして線維筋痛症を含む様々な疾患に対する有用性について述べます。

低強度レーザー治療(LLLT)とはレーザーや発光ダイオード(LED)を低周波エネルギーで標的となる細胞や組織に照射して治療することを指します。これは連続波やパルスモードで照射することが可能です(3,4)。多種多様の形状および様々な波長の発光のレーザー機器が売り出されている一方で、特定の赤い光と近赤外線の波長は、組織透過(3,5,6)と、痛みや組織回復の治療効果(7) とを最大限にする最適な周波数帯であることが分かりました。これらの周波数以外では、多くのエネルギーが他の細胞や体内の分子へ吸収されたり散乱されたりして失われます(3)。またLLLTは、低強度レーザー、低電力レーザー、冷レーザー或いはソフトレーザー、生物刺激、光生体調整、照射、低エネルギー光子療法、低出力レーザーとしても知られています(3,4)。

LLLTは安全か?
LLLTは破壊力のある熱や電離放射線を発生しません。LLLTは非侵襲で、使用される機器によっては診療所や自宅で安全に使うことが出来ます。しかしながら、使用されるレーザー機器のクラスや発信される光の波長によっては起こりうる目へのダメージに対する防護を講ずる必要があります(4)。ですから、そういった危険性を排除するために3Bクラスと4クラスのレーザーには保護メガネが必要です(2,4)。この予防措置があれば有害作用の発生する可能性は低く、この療法の調査における無作為二重盲検のプラセボと何ら変わりがありませんでした(4,8)。また被験者たちからも防護メガネの使用についての不便さは殆ど報告されませんでした。

このシリーズの次の節では、レーザーが生体組織にどのように働きかけて痛みを取り除き治癒を促進するのか、そして慢性痛の治療に対するLLLTの応用を目下の研究の知見による有効率と共に検討します。



Low Intensity Laser Therapy - A non-invasive option for treatment

パートII:痛みの除去と組織修復: LLLTのしくみ
By: Christine Nguyen, BPHE, ND
Ottawa Integrative Health Centre
1129 Carling Ave
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The Role of Diet in Insulin Resistance 鍼と同様に、その効果性は広く認識されているものの、私たちは往々にしてこの療法がどういう仕組みで作用するのかを理解するのが困難です。この節では、LLLTが痛みを取り除き組織の治癒を促進するメカニズムを論じます。

LLLTの治療効果は、レーザー光線に含まれる光子の放出に由来します。これが標的となる体内組織に透過すると、これらの細胞に存在するある特定の受容器を光子が電子的に刺激します。これらの受容器が刺激されると、細胞レベルでの特定の生物学的な作用の引き金となる情報伝達イベントのカスケードが始まります(1)。刺激される受容器のタイプによって、特定の生物学的反応がそれらの細胞から誘導されます。

過去15年間、LLLTの使用に関する50を越える無作為の対照実験がピアレビューされている医学術誌(訳者注:査読システムを採用している学術誌)に発表され、レーザー療法の生物学的な効果を証明しこの治療への新たな興味に火を付けました。

2004年には、組織修復と痛みコントロールに対するLLLTの使用に関して査読済みの43の調査のメタ分析が発表されました(2)。この分析では肯定的な治療効果が見られただけでなく、レーザーが組織におよぼす幾つかの効果が確認されました。それは、結合組織で不可欠の構造タンパク質であるコラーゲン形成の改善、回復期間の短縮、組織強度の改善、傷口癒合の改善といったものです(2,3)。研究者は同様に、組織修復の3つ全ての段階(炎症、細胞増殖、組織成熟)がレーザー治療により良い影響を受けたことを認めました。この様にレーザー療法は本質的に、怪我や傷の治癒を、a) コラーゲン(結合組織タンパク質)合成の加速(3)、b) 残骸組織を取り除き治癒を促進するために必要な炎症過程の高速化、c) 治癒中および治癒後の組織強度の改善、によって促進させます(2)。

LLLTが治癒を促進するもう一つのやり方は、治癒段階で使われるより多くのエネルギーを細胞に供給することです。どんな種類の怪我や外傷でもその後には、筋肉細胞のATP生成能力の減損が起こります(10)。ATPは細胞における“エネルギー通貨“として機能する分子です。実際にこれは交通事故後の車に喩えられるでしょう。事故で車輌を動かすのに必要なガソリンを汲み上げるガス管が止まってしまうと、それに続きエンジンの働きと出力が低下します。LLLTの注入は、ATP生産(車で言うところの”ガソリン“)を効果的に増加させ、それによってエンジンを再び働かすのに必要なプロセスを再作動させ、組織を回復させます。

最後に、どのような仕組みでLLLTが機能しないのか注意することも大切です。LLLTは標的となる組織の温度を著しく変えることはありませんので、どんな治療効果も非熱的であるように見えます(4)。同様に、この領域の電磁スペクトラムのエネルギーは非電離的(つまり、それは例えば放射線とは違います)ですので、DNAの突然変異や癌などの、紫外線に関連するいかなる危険を生じることはありません(5)。これらの理由により、レーザー療法は安全、非侵襲性かつ無痛で、診療所に設置することが可能となっているのです(6)。

LLLTには、怪我のダメージを軽減し痛みを除去し怪我の酷さを調整し、そして修復と回復への連鎖反応を刺激する潜在的能力があります。この節で、私たちはLLLTが人体にどのように働くかを理解しました。パートIIIとIVとではその慢性痛への使用について吟味します。



Low Intensity Laser Therapy - A non-invasive option for treatment

パート III: 線維筋痛症への低強度レーザー療法
By: Christine Nguyen, BPHE, ND
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Nutritional Agents for Managing PCOS: NAC and Vitamin D レーザーがどのようにしてその効果をもたらすかについて理解を得ました(パートIII)ので、ここではそれが慢性痛の患者に示されてきた治療効果について更に詳細を検討することが可能です。6ヶ月以上継続する慢性痛は、人口の高齢化により先進国でこの先30年にわたって蔓延すると予想されています(1)。依存症や痛みに対する薬剤の長期使用に関連するリスクを理由として、患者はこれらの医薬品による過剰医療に抵抗しています。

低強度レーザー療法(LLLT)は過去20年の間、痛みの管理に使われてきました(2,3)。早期の臨床の知見では、15分以内のLLLTの照射による誘因箇所の圧痛の軽減が示されました(4)。LLLTは“鎮痛剤”への依存を最小限に抑えつつ痛みの効果的な管理を助長することが可能です。

線維筋痛症(FMS: Fibromyalgia)は、原因となり得る複数の要因を持つ、痛みの箇所が広汎に渡る、複合的な痛みの症候群の1つです。LLLTの効果を評価するため、40人の女性のFMS患者に対してプラセボとの対照実験が行われました。この場合、FMSは広範囲の痛みが少なくとも3ヶ月の期間、ディジタル圧迫装置で測定して少なくとも11カ所ある場合に定義されました(3)。治療グループはLLLTを、痛みのある全ての箇所に一日3分2週間受け、プラセボグループは偽レーザー(レーザー光線の照射がない)を受けました。両グループに著しい改善が認められましたが、レーザー治療グループには、痛み、筋肉痙攣、朝の硬直および痛む箇所の数に関して、際立ってより大きな療後の効能が見られました。副作用は何も報告されませんでしたが、これは治療の選択肢が限られた慢性痛に自身が悩まされているとしばしば信じているFMSの患者にとって、LLLTが安全で効果が高く非侵襲性の治療の選択肢であることを示唆しています。

FMSの女性たちを対象とした別の研究では、偽レーザーと比較してLLLTが痛みと上半身の柔軟性を改善することが出来たことが分かりました(5)。レーザー療法が週2回、4週間、首全体と肩および背中の痛みのある7カ所に施されましたが、患者たちは痛みの改善に加え、FMSの彼女たちの生活に及ぼす影響が減少したと報告しました。

どのようにしてLLLTが痛みを調整するのでしょうか?提唱されている痛み軽減のメカニズムには、炎症の軽減(2)、酸化のストレスと筋肉疲労の軽減(6) 、神経における痛みの信号の抑制(7,4)、幸福感を増加させる“快感ホルモン”であるセロトニンの血中濃度の増加(1)、などがあります。

この様に、LLLTは痛みの疾患に対して医薬品に匹敵するものの副作用がなく、創薬よりも長期的効能という側面があり、実現可能で費用効果の妥当な効果の高い治療の選択肢であることを、近年のこれらの知見が示唆しています。



Low Intensity Laser Therapy - A non-invasive option for treatment

パートIV:腰痛への低強度レーザー療法
By: Christine Nguyen, BPHE, ND
Ottawa Integrative Health Centre
1129 Carling Ave
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The Role of Diet in Insulin Resistance 工業化の進んだ社会では、腰痛(LBP: low back pain)は人々が治療を求める最もありふれた理由の1つ(1) であり、人生の何らかの時点においてLBPは人口の80%に影響があると見積もられています(2)。その非薬理的な治療には、運動療法、教育、物理療法、鍼、手技、マッサージなど幾つか少数の選択肢があります。運動療法はLBPに広く用いられており、慢性的LBPに対するその効果的役割を多くの調査が支持して来ました(3)。加えて、レーザー療法は将来有望なLBPに対する無薬剤治療です。

136人のLBPに悩む患者が12週から12ヶ月携わった2つの調査では、LLLT、運動療法およびその両方の慢性的なLBPに対する効果を比較しました(1,2)。両方の研究でLLLTは、慢性的なLBPによる痛みと機能的廃疾を軽減する効果的な方法であることが結論づけられました。グルの2003年の調査では、週5回の治療が4週間に渡って施されました。レーザーに加えて運動の組み合わせを用いる時およびレーザー単独の時に痛みの軽減は最大で、運動単独よりも大きくなりました(2)。2007年の研究では、レーザー治療は週2回、6週間でしたが、6週間に同様の短期的効能が3種類全ての治療グループで見られる結果となりました(1)。しかし長期的には(12週間の測定では)、運動+レーザーのグループが運動療法単独を受けたグループに比べて、痛みと廃疾のより大きな軽減および動く範囲のより良い改善を示しました(1)。2つの調査は、慢性的なLBPの治療においてLLLTを運動や他の療法と共に用いることによる付加的な効能を支持しています。

レーザー療法は、慢性的な首痛など他の種類の筋骨痛に対しても効能があります。ランセットに発表された既存の学術記事の徹底的なメタ分析では、急性および慢性の首痛患者820人が参加した16の無作為対照実験が評価されました(4)。これらの実験のうち14は、平均して90ヶ月間慢性首痛に悩む人が対象でした!平均11の首にある誘因、痛みの箇所やツボに対して、1クール10回のLLLTの施術を毎日或いは週2回行いました。このレビューでは、LLLTを使用すると臨床的に著しい痛みの除去があっただけでなく、アスピリンやアドヴィル(訳者注: イブプロフェン)などの非ステロイド抗炎症剤(NSAIDs)を痛みの管理に使うのと等しい痛みの除去作用があったことが分かりました(4)。更に顕著なのは、LLLTの効能が即時にかつ長期的に起こったことです:首痛の軽減は、急性首痛では療後3ヶ月まで、慢性首痛では療後22週まで継続しました(4,5)。

私たちはこの4部シリーズを通して、低強度レーザー療法(LLLT)は、線維筋痛症、腰痛や首痛を含む慢性痛に対処するのを助ける安全で効果の高い戦略であることを学びました。LLLTは痛みの除去を助け、治癒を促進し、鎮痛剤への依存を減らすことでしょう。