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: 睡眠不足で不安症やうつ病?睡眠不足とメンタルヘルスのつながりを探る

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睡眠とメンタルヘルスの関係は、何十年にもわたり医師や研究者により研究されてきました。通常の睡眠(1日あたり7〜9時間)をとらないと、うつ病のリスクが10倍、不安症のリスクが17倍高まり、さらには不眠症で夜中に頻繁に目が覚めるほど、うつ病が生じる可能性が高まります (1)。睡眠改善薬を検討する前に、睡眠障害の一因となり得るあらゆる健康面について考慮することが大切です。

 

睡眠不足のリスク

 

睡眠は、健康を維持する上で過小評価されていますが、睡眠によってストレスや炎症が軽減して、記憶力や集中力が高まり、消化を促して健康的に痩せることさえできます。研究により、睡眠不足によって、冠動脈疾患や高血圧、不整脈などの心血管疾患のリスクが大幅に増加し、長期にわたる睡眠不足により、糖尿病や肥満のリスクが高まることが示されています。

 

2019年、およびその何年も前にも、睡眠不足の影響とアルツハイマー病の発症に関する研究が浮上しました。概日リズムの乱れにより、タウタンパク質とβアミロイドを除

Anxiety and depression due to sleep deprivation

 

去できなくなります。この2つのタンパク質が脳に蓄積すると、アルツハイマー病や認知症に伴う記憶喪失や認知機能低下が生じます (2)

 

多くの人にとって、睡眠習慣の変更は生活を維持する上で必要です。看護師や病院のスタッフ、警備員などの交代勤務労働者は、睡眠が不規則です。頻繁に異なるタイムゾーンの地域を訪れている場合も、概日リズム睡眠障害のリスクがあります。こうした事例は、様々な睡眠、気分、代謝の長期的影響に関する研究論文の焦点となっています。こうした研究により、睡眠不足によって、生理的なストレス反応として、一晩中、炎症メディエーターが生成されることが示されています。これにより、腸内細菌叢の機能が損なわれ、有害菌が異常増殖して炎症が生じ、代謝が変化します。つまり、交代勤務労働者は、肥満や2型糖尿病の発症リスクが高いのです(3)

 

睡眠不足とうつ病

 

睡眠と気分の関係を測定するのは困難で、様々な要因があり、一つひとつのケースで異なります。新生児を持つ母親は睡眠不足ですが、ホルモンが急激に変化して分娩後うつ病が悪化する可能性もあります。また、大切な人や仕事を失うと、悲しみのあまり睡眠や気分が変化することもあります。こうした影響を測定または比較することはできません。

 

うつ病の症状には睡眠障害と同じ症状があるため、誤診されることがよくあります。うつ病は、閉塞性睡眠時無呼吸、ナルコレプシー、レストレスレッグス症候群に伴い生じることが多いですが、こうした睡眠障害が診断されずにいると、うつ病の症状がより顕著に現れ、うつ病のみが治療されます。閉塞性睡眠時無呼吸に関するヨーロッパの研究では、うつ病の場合、睡眠呼吸障害を患う可能性が5倍高く、CPAP療法(経鼻的持続陽圧呼吸療法)を1年間行うことで、気分が大幅に改善され維持されることが示されています(4)

 

季節性感情障害と睡眠

 

冬は、不眠とうつ病に苦しんでいる人にとって厳しい季節です。夜が長く昼が短いため、セロトニンとメラトニンのバランスが崩れ、気分が落ち込みます。セロトニンとメラトニンは同属で、セロトニンによりメラトニンが生成されます。日照時間がより短い冬には、メラトニンの需要が高まって蓄積されたセロトニンが減少し、気分のバランスを保つために必要なセロトニンが減少します。これによって、無気力になり、やる気や満足度が低下する可能性が高まります。

 

冬の時期にはより睡眠を摂るべきですが、現代のライフスタイルではそれが困難です。一日にやるべき事が多すぎて、寝る時間が遅くなり、朝なかなか起きられないのが現状です

 

Anxiety and depression due to sleep deprivation

 

睡眠不足と子どものうつ病

 

子どもの精神障害は、21世紀の最も重要な健康問題かもしれません。子どもには異なったコミュニケーション手段があり、常に大人に自分の感情を伝えられるとは限りません。パソコンや携帯電話の長時間の使用、課外活動への過剰な参加、数多くの家族行事などにより、睡眠や休憩を十分にとれないことが多くあります。多くの子どもが、忙しい一日の終わりに適度な息抜きをすることができず、これによって睡眠が乱れて気分障害が生じ、授業中に集中力が低下する可能性があります。2006年の国立睡眠財団によるアメリカにおける睡眠調査では、不幸せだと感じている11~17歳の子どものうち、73%が睡眠不足であることがわかりました (4)

 

睡眠不足と注意欠如・多動症(ADHD)

 

子どもと大人では眠気の現れが大きく異なります。大人は疲れると身体機能が減速するようですが、子どもは逆にそれを補おうと加速する傾向があります。子どもが睡眠不足の場合、不機嫌になったり感情が爆発したり、攻撃的になったりします。こうした子どもは、注意欠如・多動症と診断されることが多くあります。注意欠如・多動症は、様々な睡眠障害とつながりがありますが、どちらが先に生じたかを判断するのは困難です。注意欠如・多動症の子どもは、日中に眠気を感じる割合が高く、注意欠如・多動症の子どもの50%が、睡眠呼吸障害やレストレスレッグス症候群などの睡眠障害を患っています (5)。睡眠障害を管理することで、大人と子どもの注意欠如・多動症の症状を解消したり大幅に緩和したりできるでしょう。

 

睡眠不足と不安

 

不安症によって睡眠障害が生じ、睡眠不足により不安症が悪化する可能性があります。 1日を通じて、体内では、ストレスの多い出来事に対してコルチゾールが生成されます。 私たちは、危険を認識すると、本能的に不安になり危機を感じます。一日の終わりにメラトニンが上昇するためには、コルチゾールが減少しなければなりません。つまり、就寝前の夕方の時間帯に、睡眠に向けて、ストレス反応を軽減してコルチゾールの過剰分泌を抑え、神経を落ち着かせることが大切です。夜間にストレス反応が軽減されていないと、眠りが浅く、頻繁に目が覚め、脳が過剰に活動します。

 

前述したように、睡眠不足によって不安症のリスクが17倍高まります。日中にストレスや不安を誤って認識することで、覚醒障害が生じます。つまり、常にストレスの多い出来事を予測し、攻撃・逃避反応の状態になっています。これが続くと、睡眠・覚醒リズム障害や睡眠障害が生じやすくなります。

 

過眠症

 

睡眠不足だけではなく、過剰な睡眠も気分障害の現れかもしれません。過眠症、または日中の過度の眠気は、うつ病などの気分障害と強いかかわりがあります。3ヶ月以上にわたり、睡眠時間が1日11時間以上であることが特徴です。こうした過度の眠気は、睡眠ポリグラフ検査で確認でき、一般に非回復性睡眠です。過眠症は、特定の遺伝性代謝疾患とかかわりがあるようですが、多くの場合、一過性で、ライフスタイルが要因で生じることが多くあります。最近の研究では、過眠症は、体内時計の変化、薬物療

 

Anxiety and depression due to sleep deprivation

 

法の副作用、重度の炎症など、様々な要因で生じる可能性があることが示されています (6)

 

では、適切な睡眠時間は何時間でしょう?

 

現在の睡眠ガイドラインでは、成人の1日の推奨睡眠時間は7〜9時間とされています。多くの子どもにとって、1日10時間以上の睡眠が必要ですが、推奨時間は子どもの年齢によって異なります。加齢に伴い必要とする睡眠時間が少なくなりますが、それほど違いはなく、高齢者に対しても1日7〜8時間、9時間以下の睡眠が推奨されています(7)

 

様々な書籍やポッドキャスト、ドキュメンタリーで、睡眠の重要性と睡眠不足による悪影響に関する人生を変えるストーリーが紹介されています。この記事では、睡眠不足が気分に与える影響について触れました。実際には、睡眠障害の影響は、消化管、免疫系、生殖系にまで及びます。イライラ感、欲求不満、気分の落ち込みは、睡眠不足の一般的な兆候です。睡眠不足によって、エネルギーレベルが低下してホルモンのバランスが崩れ、食欲が変化します。既存のメンタルヘルス状態にかかわりなく、わずかな睡眠不足でも、時間の経過とともに幸福度が低下する可能性があります。睡眠が対人関係に深く影響することは否めなく、軽んじるべきではありません。

 

 

References:

 

  1. National Sleep Foundation (2020). The Complex Relationship Between Sleep, Depression & Anxiety. Retrieved from: https://www.sleepfoundation.org/excessive-sleepiness/health-impact/complex-relationship-between-sleep-depression-anxiety
  2. Wu, H. et al. (2019). The role of sleep deprivation and circadian rhythm disruption as risk factors of Alzheimer’s Disease. Frontiers in Neuroendocrinology. https://doi.org/10.1016/j.yfrne.2019.100764
  3. Reynolds, A. et al. (2017). The shift work and health research agenda: Considering changes in gut microbiota as a pathway linking shift work, sleep loss, circadian misalignment and metabolic disease. Sleep Medicine Reviews. https://doi.org/10.1016/j.smrv.2016.06.009
  4. National Sleep Foundation (2020). Depression and Sleep. Retrieved from: https://www.sleepfoundation.org/articles/depression-and-sleep
  5. National Sleep Foundation (2020). ADHD and sleep. Retrieved from: https://www.sleepfoundation.org/articles/adhd-and-sleep
  6. Plante, D. (2015). Hypersomnia in Mood Disorders: a Rapidly Changing Landscape. Curr Sleep Med Rep. 2015 June ; 1(2): 122–130. doi:10.1007/s40675-015-0017-9

National Sleep Foundation (2015). National Sleep Foundation Recommends New Sleep Times. Retrieved from: https://www.sleepfoundation.org/press-release/national-sleep-foundation-recommends-new-sleep-times