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ガン患者にとっての鍼の利点

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ガン患者にとっての鍼の利点-概要

by ジェッサ・ランドマン自然療法医師

The Centre for Natural Medicine
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ガン患者にとっての鍼の利点-概要

はじめに


ガンの治療やその副作用に対する代替医療の利用は近年急速に高まっています。代替医療というのは、元来、薬を用いず、生活の質を高めかつ従来治療の副作用を軽減可能なものを言います。このような治療法には、マッサージ、ヨガ、瞑想、鍼、栄養補給、そして静脈テラピーといったものがあります。

ガンと共に生きる人たちには、しばしば、副作用となる多くの問題があります。まず、ガン自体に関連する痛み、あるいは不安や抑うつの様な激しい情緒不安があるかも知れませんが、これらは一般に睡眠を妨げます。次に、手術、化学療法、放射線療法やホルモン療法と直接に関係する、吐き気や嘔吐、慢性術後疼痛、疲労、口のびらん、あるいは火照りの様な副作用があるかも知れません。最後に、これらの副作用を抑えるために処方される薬による副作用があるかも知れません。副作用を予防し最小限に抑えることは、残念ながら医学では充分な対処がされておらず、効果的で、安全、そして目立った副作用プロフィールのない治療法を発見し、利用することは最重要課題となっています。

鍼は、長い間、伝統中国医学で用いられてきましたが、これは西側諸国でより一般的に利用されるようになりつつあります。鍼は、伝導性がより高い体のツボの位置に、極めて細い針を皮膚挿入します。絶えず幾つもの研究で、ガン患者における鍼治療の安全性および非常に低率の副作用が、報告されています。最も一般的な副作用は、鍼を挿入した部位のあざや痛みで、副作用のリスクは10,000回の治療のうち0.05であることがあるレビューで述べられています[1]

鍼がガン患者人口の生活の質を改善する可能性は極めて高いものとなっています。とある医学研究のレビューは非常に印象的です。最近行われたあるレビューでは、研究の大半が、ガンに関連する痛み、疲労、吐き気や嘔吐、火照り、そして生活の質に対する鍼の有効性を支持しているという結論が下されました[2]。これは、何故この治療法が標準的な治療の一部として考慮されないのかという疑問を投げかけています。


免疫機能

免疫システムはガンと闘い、転移を防ぐためのキープレーヤーです。しばしば免疫機能は、従来治療の間は弱まりますが、これは治療の中断や感染リスクの増加をもたらす可能性があります。免疫細胞の低下を防ぐことが可能な治療は非常に大切です。鍼治療はマクロファージ、好中球、ナチュラルキラー細胞、リンパ球、そして免疫グロブリンの生産を増加させることが、多くの研究によって示されました[3]。ある最近の研究では、(実際上、非常に少数ですが)無作為に選ばれた18人のステージ2あるいは3の大腸ガン患者さんたちに、化学療法と共に毎週の鍼治療のセッションあるいは化学療法単独を受けてもらいました。化学療法単独グループと比較して鍼治療グループでは、白血球細胞、ナチュラルキラー細胞、そして好中球の増加が示されました。[3]


末梢神経障害

末梢神経障害の特徴は指およびつま先の疼きと痛みで、更に患者さんたちは暑さ、寒さそして気圧に対して非常に敏感になる可能性があります。末梢神経障害は生活の質を大きく損ね、数ヶ月あるいは何年も長引く可能性すらあり、処方薬での治療は不十分です。最近のあるレビューでは、末梢神経障害に対する鍼の効果に関する調査から得られた知見が纏められました[4]。末梢神経障害に苦しむ5人の患者さんを対象としたある小規模な調査では、週一回、6週間の鍼のセッションを(4週間の間を置いて)二回行ったところ、痛みのスコアに有意な改善が示され、この効果は患者さん5人のうちの4人で6ヶ月間継続しました[5]。ある最近のパイロット調査では、化学療法後平均19ヶ月の間、グレード2以上の末梢神経障害の患者さん25人に週一回の鍼治療を10週間施しました。10週の終わりに、痛みのスコアは20.1から13.2へと減少し、56%の患者さんたちが日常の機能(歩く、ボタンを留める)が改善したことを、そして40%の患者さんたちが症状の50%以上の軽減を、報告しました。この結果は、追跡期間の4週間後にも継続していました。[6]


吐き気と嘔吐 吐き気と嘔吐

吐き気と嘔吐は、手術後だけでなく化学療法後にもよく見られます。あるコクラン・レビューでは、吐き気と嘔吐の治療として鍼の施術を受けた3000人を超える患者さんたちを対象とした26の研究結果を調査したところ、一か所のツボを刺激することは極めて効果が高いことが分かりました。更に、鍼は制吐薬よりも優れていたことがデータによって示されています。[7]


疲労

ガンに関連する疲労は、休息や睡眠によって簡単に緩和されるような種類の疲労ではありません。これはしばしば、消耗が激しく、治療後慢性的に継続する可能性があります。往々にして患者さんたちは、この症状のための代替治療を求めます。ステージ1から3までの乳ガン患者さんたちを対象としたある研究では、無作為に患者さん75人に通常の治療(鍼なし)を、そして227人には週一回の鍼治療を6週間、施しました。治療の前後と治療6週間後に疲労スコアの評価を行ったところ、対照群と比較して鍼治療群に有意な疲労改善が見られました。[8]


火照り

火照りは、乳ガンの女性や前立腺ガンの男性に施されるホルモン療法では非常に良くある副作用です。男性と女性との両方が、一日に何回も酷い火照りを経験するでしょう。火照りの標準的な治療は選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRIs: selective serotonin reuptake inhibitors)あるいはガバペンチンですが、全ての患者さんが完全寛解を経験する訳ではありません。ある小規模な研究では、アンドロゲン遮断療法の処方を受け、火照りを経験している前立腺ガンの男性7人を詳細に調査しました。男性各人が週二回の鍼のセッションを6週間受けたところ、治療セッションの終わりには火照りの重症度が低下し、全員が火照りの頻度が少なくとも50%減少したと報告しました[9]。もう1つのより大規模な臨床試験では、一日2回以上火照りのある元乳ガン患者さん120人について調査しました。彼女たちは無作為に、週一回の鍼セッションを8週間もしくは毎日のガバペンチンのどちらかが施されました。火照りの改善は、鍼のグループで最大で、しかも副作用は最小でした。[10]


痛み

ガンの痛みは手術、放射線や化学療法の副作用、あるいは圧力や炎症を引き起こしている腫瘍自体が原因かも知れません。一般に痛みは、アヘンのような強い処方鎮痛薬で管理しますが、アヘンには不快な副作用があります。痛みの管理のための代替治療は非常に重要です。寛解あるいは積極的に治療中の患者さん183人を対象としたある研究では、主訴である痛みに対して鍼による治療を施しました。その結果、慢性痛に関する症状の重症度の平均スコアは、7.04から2.56へと減少することが示されました[11]。関節痛も、アロマターゼ阻害薬の投与を受けている乳ガンの女性で一般的な症状です。ある研究では、女性67人を無作為に、10回の電気鍼療法あるいはウェイティングリストの対照群に振り分けましたが、鍼グループでは簡易疼痛調査票によって評価した痛みのスコアが有意に低く、この効果は追跡期間の12週間後にも継続していることが示されました。[12]


リンパ浮腫 リンパ浮腫

リンパ浮腫は、乳ガンによるリンパ節除去が原因で起こります。ある研究では、左右の腕の周囲長の違いが2cmを超えるものがリンパ浮腫であると定義した上で、乳ガン患者37人を登録し、これらの患者さんたちは週二回の治療を4週間受けました。浮腫の腕のサイズ減少の平均は0.9cmでしたが、これは統計上有意と見なされました。[13]


口腔乾燥症

口腔乾燥症(またはドライマウス)は、放射線療法を受けた頭部ガンや頸部ガンの患者さんに良く見られます。唾液腺が損なわれ、これは唾液の生産を減らします。この慢性病の治療としての鍼の効果について、著しく肯定的な研究が存在します。ある研究では、ドライマウスに悩む頭部および頸部のガン患者さん145人を、無作為に、8セッションの鍼あるいは通常の口腔ケアに割り振りました。通常のケアと比較して、鍼では重症のドライマウス、粘り気のある唾液、常時水分を摂取する必要性、そして水分補給のために夜間目が覚めることを報告する患者さんの減少数が有意に大きかったのです。[14]


その他

ガン患者さんの一般的な生活の質パラメターに対する鍼の効果を評価するという目的で、他にも多くの研究が行われましたが、これらは効果的であることを示す傾向にあります。乳ガン患者を対象としたある研究では、無作為に選ばれた女性40人が週一回の鍼のセッションあるいはプラセボを10回受けました。研究者たちは、鍼が疲労、睡眠、そして心理的苦痛を改善できるかを調査しました。その結果、疲労および不安に統計的に有意な減少があったのに加えて、睡眠にわずかな改善が示されました[15]。もう一つの研究では、肺ガン患者さん33人に、週一回あるいは二回の鍼治療を7-13週間、施しました。痛み、吐き気、食欲、そして全体的なウェルビーイングに関連するスコアに有意な改善がありました。[16]


結論

鍼は、従来のガン治療の副作用を改善するための、非常に良く研究され、充分な裏付けのある治療法で、生活の質を著しく改善するでしょう。